500万年前、樹上で生活していた人類の祖先は、地上を闊歩する捕食者よりも圧倒的に身体能力が劣っているにも関わらず、樹上生活を捨てて地上での生活を選択した。

　きっと食糧を求めての選択だったに違いないが、そのことがやがて直立二足歩行への移行を促し、歩行に不必要になった両手の使いみちを変えて脳の爆発的な発達への起爆剤になったと考えられている。

　一方で、その過程は樹上から降りたがために常に捕食者に狙われるという戦いの連続だったハズで、簡単な武器を手に入れ、あるいは作り、捕食者との体力差をカバーするに至るまで、何百万年も捕食者の影にビクつきながら生活していたに違いない。

　そして今や、人類はこの星の食物連鎖のトップに君臨し、アマゾンの密林やアフリカのサバンナ、ベンガル湾岸の森林でないかぎり、捕食者の足音に耳をそばだてる必要も無くなった。

　そういう意味で、かつての人類、例えばアウストラロピテクス属と比べれば、ホモサピエンスの危険察知能力は恐ろしく退化していたハズだ。そのホモサピエンスだって、出現当初に比べれば現代人のそれは遥かに劣っているに違いない。

　事ほど左様に、人類の危険察知能力は人類が進化すればするほど反比例して退化していると思われ、それなのに個人の責任がより問われる成年年齢は20歳から押し下げられて18歳になった。あの、急に何百万年単位の壮大なハナシから、強引に現在のピンポイントな話題に振ってしまってスミマセン…。

　過日、本学（国際文化理容美容専門学校 渋谷校/国分寺校）では、『警視庁』から講師を招いての『防犯セミナー』を開催。成年年齢が18歳に引き下げられたことで、保護者の同意なしに成立してしまうアパート賃貸契約やクレジットカード契約、SNSを介した悪質商法や性犯罪といったものの危険が18歳にまで及んでしまうことにもなり、そうした危険性がレクチャーされておりました。

　耳をそばだてる対象が、獰猛な大型肉食獣から同種の人間になった現在。未だ顕在化していない人類共通の敵でも現れないかぎり、ワタクシたち人類は互いに傷つけあうことを止められないのでありましょうか。